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01:彼の名前はクラップス。 日本出身の化け猫だが、同時に魔女の猫でもある。 02:クラップスにはとっておきの魔法の肉球があった。 彼はこの肉球ですべてを解決してきたのだ。 03:運が良いな、今夜は彼が教えてくれるらしい。 クラップスがどうして“クラップス”になったのか… そして、どうして「魔女猫」になったのか。
04:それはまだクラップスが「プス」の頃、 いよいよ名前が「スクラップ」になりそうな時のこと… 05:夜みたいに暗い底に向かってクラップス (と言ってもこの時まだプスで、あとちょっとでスクラップになる子猫) は落とされてしまった。 06:この時ぼくは初めてこの肉球にお願いをした。 ああ、もう一回だけ日向ぼっこができたら何でもするのに… そしてすぐに気付いた、ぼくの肉球には魔法がかかっていると! 07:たしかに魔法のような事が起きた。 スクラップになりかけたぼくを見付けたのが 偶然このあたりを旅行中の魔女だったからだ。
08:それから彼女は色々なことを僕に教え始めた。 僕が思うに、おそらく僕が優秀だもんだから猫の手も借りたかったんだろう。 09:優秀な僕は実によく手助けをしたものだ。 どのくらい優秀かと言うと、僕が手助けをするたびに 「お利口さん、S級の猫ね!」と彼女が褒めるくらいだ。 10:それから二十年ほど経った頃には、魔女の飼い猫として立派に生きていた。 …勘違いしないで欲しいのは、この時はまだ「魔女猫」ではない点だ。 そしてある日、魔女である彼女から提案があった。
11:魔女猫協会から僕宛に手紙が来ていて、魔女猫になる意思があるか?という内容だった。(僕宛だからすべて猫の言葉だ)すごい!更に優秀になる機会だ!と僕は二つ返事で受験を決めた。 …もちろん、彼女には「これに受かったら君の助けになるかい?」と確認した。 12:それから彼女の机を借りて魔女猫になるための試験勉強を始めたんだが… なにぶん優秀な猫だから、彼女の寝ている隙にだいたい覚えてしまった。 (飼い猫として彼女のそばにいるのを放棄したくなかったのは秘密だ) 13:「ホウキに乗る練習」だったり「器用な爪の使い方」練習したり… これがまた難しくて何度も失敗したんだが… まあ、最後には肉球のおかげで何とかなったかな 14:そうこうしている内に試験の日になった。 試験会場には受験を控えた毛皮仲間があちこちに居たようだが、僕はその時すでに合格の2文字しか頭になかった。…ちょっぴり毛が逆立った僕のために、彼女は魔女の秘密ポーチからある物を取り出した…
15:筆記、実技、操縦…色々な問いが出されて終わる頃には皆ヘトヘトだったし、実際僕も何度か危ない目に遭った。 でも僕の肉球にはまじないが掛けられていたし、いつも以上に頑張れた気がする。 さすがは魔女、すごい魔法だ。(「ラメ」という粉らしい) 16:試験が終わった僕達は教室に集められて(猫は気になる事は先延ばしにしない決まりなんだ)いよいよ結果発表の時が来た。呼ばれたら合格だ… …斜め前のノッポが呼ばれた…僕の前を飛んでいたひょうきんな奴が呼ばれた……僕の名はまだ呼ばれない… ああ、ドキドキしてきた… 17:待っても待っても僕の名が聞こえない… どうにもおかしい…あまりにもおかしい…! 僕は魔法の肉球に「彼女には良い結果しか教えたくない、頼む!」と願った。 …試験官は何て言ったと思う? 「以上で合格者はおしまい」 急に真っ白の猫になったような気分だった。
18:毛皮仲間達に次々と迎えが来た。もちろん彼女もニコニコしながら僕の元へ… …正直、今一番会いたくない人と会ってしまった訳だ。分かるだろ? すると突然、委員長が大声で「次の者は前に来ること!」と言った。 きっと僕だ…すごく惨めだな… 19:僕の耳が人間の耳だったらあまりの悔しさに聞き逃していたかも知れない。 あの瞬間、ああぼく猫で良かった!なんて思ったよ。 (バッチリ彼女の耳にも届いていたさ!) 魔女猫協会のトップはこう言った。「トップクラス、クラップス!」
20:試験の後、親睦を兼ねたダンスパーティーが催された。 おチビさんがキラキラした物を忘れたって鳴いてたんで、僕のシールをやった。 僕は彼女のハンカチーフ(金の刺繍入りだ)を借りての参加だ。 猫を踏みそうな奴は居ないから安心だな… 21:毛皮仲間とはそれぞれ得意なステップで歩み寄った。 手拍子をして貰ったり、記念写真なんかも撮ったかな? そして美味しいマタタビジュースを飲んでいる時、 フロアを湧かせたのはおチビさんの大きな声だ。 「クラップス!あなた怪我してるわ!」
22:そりゃもう驚いた!尾が2つに裂けていたんだから! 倒れ込んだ僕を支えて彼女はこう言った。 「大丈夫よ、クラップス…そして貴方に拍手を送るわ!」 何でも僕の生まれた国では魔女猫以外にも生き方があって、 ネコマタと言うらしい。尾が裂ける前に言ってくれたら!(無理だけど) 23:帰りはもちろん彼女の箒の上だ(魔女猫でないと後ろには乗れない決まり) ついに僕は魔女である彼女の、正真正銘のサポーターになった! あの日は月も僕の両目もギラギラしていたろうな…この後余所見していて落ちそうになったのも、今となっては気にしてない。
24:魔女と魔女猫という素晴らしい僕達だが、ある意味彼女にも変化が訪れた。 彼女がある日カノジョになってしまったらどうする? 僕ならちょっと離れてお祝いするね、舐めてかかると火傷するってもんだ。 25:彼女の変化はそれだけじゃなかった。何と言うのか… まるきり別人の様になったんだ。カノジョらしい格好をしたいと言っていたかな?まあ、僕にとっては彼女は彼女のままだ。カノジョらしいかは分からないが、そこが彼女らしいと思えた。 26:ある日…それまで順調だったカノジョの生活は突然曇り始めた。 ああ僕のエイプリル、泣かないで欲しい。 猫である僕にとって水が落ちてくるのは耐えられないんだよ! 聞けば、彼が今日の約束をすっぽかしたらしい。
27:居ても立っても居られなくなって、僕は思い切って彼女の代わりにソイツを引っ叩いてでも呼んで来ようと思った。気付いたら「クラップス!ユア!ハンド!」なんて叫んでた。…まあ、拙いイントネーションだったけど。 28:すぐさま僕は行動に出た。魔女猫は魔女の私生活に口出しなんてしないが、あいにく僕はネコマタって奴だし問題ない。布を頭にかぶせたら出発だ。たしかアイツはよく仲間と空家に居たな?すぐさま僕は公道に出た。 29:小走りでアイツが根城にしている空家に向かったんだが、アイツ彼女との約束を忘れて何をしていたと思う?それを見た瞬間、僕は頭どころかヒゲの先にまで血が上ったような気にもなったさ!
30:アイツ、彼女に溺れるどころか酒に溺れてたんだ! そりゃあ仲間が大事なのは猫にだって分かるが、それにしたってヒゲに来た! 変化が解けるのも気にせずに僕はキャットファイト… 違うな、ドッグファイトだったっけ?…をしたんだ。 31:次の日になってちょっとやり過ぎたかな…なんて思ったんで、肉球に「今からでも彼女にとって良い方向にならないものかな?」なんてお願いしておいた。 あの年のハロウィンは大体そんな感じだったかな。
…ところで今年は君も? 猫じゃなさそうだけど彼等と仲良くできそうだな…
ちょうど良かった。 猫見知りでも人見知りでもなければだけど、僕らと行かないか? お菓子を集めに行くって聞かないんだこの子達は…! 君がいると心強いよ、半分オオカミだから振り回されちゃってね じゃ、行こうか…